「おかえり倫太郎」
「うわ」
「ひどい」
「玄関にいるとは思わなかった」
「帰ってくるのずっと待ってたんだよ」
「ここで?」
「ここで」
「寒かったでしょ」
「ちょっとだけ」
「部屋で待ってなよ」
「早く帰ってきて欲しかったから、待ち切れなくて」
「びっくりするからね」
「びっくりしてたね」
「うん」
「倫太郎が早く帰ってきてよかった」
「ほんとにずっとここで待ってたの」
「待ってたよ」
「何かあった?」
「何かあった」
「どうしたの」
「お風呂にする?ご飯にする?」
「それやるの?」
「うん」
「えー」
「面倒くさそうな顔やめて」
「実際面倒くさいじゃん」
「お風呂にする?ご飯にする?」
「結局やるのかよ」
「やるよ」
「えー」
「お風呂にする?ご飯にする?」
「……」
「それとも電球交換?」
「え?」
「電球交換」
「なんで」
「助けて欲しくて」
「電球?」
「うん」
「切れたの?」
「電球切れて部屋暗い」
「電球交換しろって?」
「うん」
「最初から普通に言いなよ」
:
「うわ、部屋暗い」
「真っ暗だよ」
「電気ほんとにつかないね」
「うん」
「なんか電球切れそうな気配はあったけどさ」
「そう。騙し騙し使ってたのが今日でダメになったみたい」
「もっと早く交換してたらよかったね」
「部屋が暗くなるとそう思うよね」
「明るい時に交換してたらよかったね」
「うん。倫太郎いる時に早くやっておけばよかったって思った」
「ははは」
:
「電球かして」
「届く?」
「椅子に乗りたい」
「どう?」
「椅子乗ったら天井近くて腰痛い」
「わたしがやったほうがいい?」
「乗れる?」
「怖い」
「じゃあ俺がやるね」
「お願い」
「スマホのライトつけて天井照らしてもらえる?」
「こう?」
「ありがとう」
「どういたしまして」
「よし」
「できた?」
「うん」
「倫太郎降りたら電気つける」
「お願い」
「電気ついた」
「お、いいね」
「ありがとう」
「もっと感謝して」
「倫太郎のおかげですごく助かった」
「それだけ?」
「もっと?」
「うん」
「倫太郎ありがとう」
「うん」
「かっこいい」
「うん」
「好き」
「知ってる」
2020-12-23